最高裁判所第二小法廷 昭和37年(あ)2206号 判決 1963年9月13日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人小林正基の上告趣意第一点は、憲法三八条二項違反を主張する。すでに勾留されている被疑者が、捜査官から取り調べられるさいに、さらに手錠を施されたまゝであるときは、その心身になんらかの圧迫を受け、任意の供述は期待できないものと推定せられ、反証のない限りその供述の任意性につき一応の疑いをさしはさむべきであると解するのが相当である。しかし、本件においては、原判決は証拠に基づき、検察官は被告人らに手錠を施したまゝ取調を行ったけれども、終始おだやかな雰囲気のうちに取調を進め、被告人らの検察官に対する供述は、すべて任意になされたものであることが明らかであると認定しているのである。したがって所論の被告人らの自白は、任意であることの反証が立証されているものというべく、所論違憲の主張は、その前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張にすぎない。同第二点は、事実誤認の主張であり、同第三点は、量刑の非難にすぎない。以上すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)